従来の疼痛発生メカニズムに基づく「痛みの分類」に異議あり!~痛みの治療がうまくいかない元凶はここにあるのかもしれない~
1.はじめに
受診される患者さんの中には、手術を受けたのに改善しなかった坐骨神経痛、最初は効いていた硬膜外ブロックが効かなくなった慢性腰痛、ヒアルロン酸の注射が効果のない膝の痛み、神経痛に効くという薬を飲んでいるが一向に効かない坐骨神経痛などなど、痛みの治療がうまくいかないことで困っている患者さんが数多くおられます。
受けられた診断、治療は、一般にどこの医療機関でも行なわれているものですが、それが何故うまくいかないのか? その背景には、これまで常識として語られてきた「痛み」に関する基本的な考え方に欠陥があるからではないかと私は考えます。
医師が疼痛疾患の診断を行なう上での基礎となっている「疼痛発生メカニズムに基づく痛みの分類」では、痛みは基本的には炎症による痛みと神経痛の二つに限られており、そこに痛みの治療がうまくいかない根源的が原因があると、私は考えています。
2.従来の疼痛発生メカニズムに基づく痛みの分類
疼痛の発生メカニズムに基づく痛みの分類は、一般的には、
- 1.侵害受容性疼痛
- 2.神経障害性疼痛
- 3.心因性疼痛
とされています。
最近刊行された日本医師会雑誌 第143巻・特別号(1) 「痛みのマネジメント update」では、
- 1.侵害受容性疼痛=炎症性疼痛
- 2.神経障害性疼痛
- 3.心因性疼痛
と記述され、下記のような図が示されています。
※「痛みのマネジメント update」 S2 図1 痛みの生じるさまざまなメカニズム」を改編