目次

  1. はじめに
  2. 従来の疼痛発生メカニズムに基づく痛みの分類
  3. 侵害受容性疼痛(炎症性疼痛)
  4. 神経障害性疼痛
  5. 心因性疼痛
  6. 従来の痛みの発生メカニズムに基づいた分類のまとめ
  7. 治療が必要な痛み、治療によって改善する痛みとは
  8. 侵害受容器が感作されることによって起こる筋膜性疼痛
  9. 最後に

1.はじめに

受診される患者さんの中には、脊柱管狭窄症と診断されて手術を受けたのに痛みが改善しなかった、慢性の腰痛で硬膜外ブロックを繰り返し受けていたら効果がなくなった、変形性膝関節症と言われてヒアルロン酸の注射を受けているが効果がない、坐骨神経痛と言われ神経痛に効くという薬を飲んでいるが一向に効かない、などなど、痛みの治療がうまくいかないことで困っている患者さんが数多くおられます。

受けられた診断、治療は、一般にどこの医療機関でも行なわれているものですが、それが何故うまくいかないのか? その背景には、これまで常識として語られてきた「痛み」に関する基本的な考え方に欠陥があるからではないかと私は考えています。

医師が疼痛疾患の診断を行なう上での基礎となっている「疼痛発生メカニズムに基づく痛みの分類」では、痛みは基本的には炎症による痛みと神経痛の二つに限られており、そこに痛みの治療がうまくいかない根源的な原因があると、私は考えています。